土佐八升豆コラム

土佐八升豆を
育てるんに、
農薬も化学肥料も
いらんらしい。

土佐八升豆を
育てるんに、
農薬も化学肥料も
いらんらしい。

🫛土佐八升豆コラム

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高知県の伝統野菜の「八升豆」。一度、栽培が途絶えてしまったこの豆を、仁淀川が流れる日高村を中心に「土佐八升豆」として復活させました。

実はこの土佐八升豆は、土地を元気にしてくれるんです。栽培するには、農薬も化学肥料もほとんど必要なし。むしろ育てることで土壌を豊かにし、環境にもやさしいんです。

どうしてそんなことができるのか?

 今回は八升豆を知り尽くす八升豆研究の第一人者・藤井教授にその秘密を聞いてきました!

藤井義晴教授
農林水産省農業技術研究所、農業環境技術研究所、四国農業試験場、独立行政法人農業環境技術研究所、東京農工大学の名誉教授などを経て、(現)鯉淵学園農業栄養専門学校 教授。八升豆を広げる活動を精力的に行なっている。

村上由佳
大学を卒業してすぐに岡山から高知県日高村に移住し地域おこし協力隊に着任。協力隊卒業後は、日高村の地域活性を推進しているnossonに所属し活動中。あだ名はむっちゃん。

むっちゃん

藤井先生、土佐八升豆が農薬や化学肥料がなくても育てられる理由は何ですか?

藤井教授

理由は4つ。一つ目は「根っこ」ですね。八升豆はマメ科だから、根に根粒菌(こんりゅうきん)がつきます。この根粒菌が空気中の窒素をキャッチして植物が栄養として使える形に窒素固定をしてくれるんです。 しかも、この根粒菌が大豆は数メートル程度なのに比べて、八升豆の根粒菌はピンポン玉ほどの大きさになるんです。それは本当にお見事です。

むっちゃん

だから窒素の化学肥料をたくさん入れなくても育ちやすいんですね。

藤井教授

そう。逆に肥料をあげすぎたら根粒菌はできないので、あまり肥料は必要ないですね。栄養が少ない土壌で八升豆を何年も育て続けることで、土壌も元気になっていくはずですよ!

むっちゃん

なるほど、根が肥料工場みたいなもんですね!

藤井教授

そう。2つ目は「無限成長植物」であること。八升豆は成長が止まらない無限成長植物。ツルがぐんぐん伸びて葉も茂るから、畑の地面に日が当たらなくなることで、雑草が生えにくくなるんです。

むっちゃん

だから除草剤などはあまり必要ないんですね。
確かに、土佐八升豆はぐんぐん伸びますね。初めて植えた年、苗同士の距離を近くしてしまい、葉っぱが茂りすぎて大変なことになったこともあります(笑)。
その経験を生かして、今では3〜4mほど空けて植えるようになりました。

藤井教授

そうなんです。そして3つ目は「虫に強い」こと。八升豆はL-ドーパという成分をたくさん含有しています。その成分とサヤについているチクチクの毛によって、あまり虫を寄せ付けないんです。
以前、大豆と八升豆を一緒に栽培してみたことがあるのですが、八升豆には虫が寄りつかないのに、大豆は虫の被害を受けて大変だったことがありました。

むっちゃん

虫がつきにくいことで、病気にもなりにくく、結果的に消毒などもする必要がないんですね。

藤井教授

そういうことです!
最後はそのツルや葉っぱが「緑肥植物」になること。1つ目のときにお話ししたように、マメ科は土の窒素を増やす方向に働くから、刈り取ったツルや葉をすき込むことで土の窒素肥料の代わりになる。また、植物が分解されることで有機物が土壌に増えて、土壌改良になるんです。

むっちゃん

すごい……! 育てた後の葉っぱやツルまでも活用できるんですね。
土佐八升豆は元気がない土壌でも育ち、虫にも強い。ツルや葉っぱをすき込むことで、肥料にもなり、育て続けることで土地が元気になる!
だから農薬や化学肥料がなくても土佐八升豆を育てることができるんですね。

藤井教授

まさに。

むっちゃん

農薬や化学肥料を使わないから、うさぎに食べられることが多いです……。
せっかく村民が植えたのに、畑の半分ぐらいうさぎに食べられてしまって。悲しい……。
うさぎも、体にいいものをわかってるってことなのですかね!
日高村では、うさぎ対策が課題ですが、さすが土佐の伝統野菜。これからの力強く、育ってほしいです。
本日はありがとうございました!